【働き方を考える】女性の社会進出を名字が縛る?

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(出典:GATAG|フリー素材集 壱)

 

今日はホットなニュースの話題から考えてみたいと思います。

先日10月11日に東京地裁は
中高一貫校である日大三高に勤める30代の女性教師の
「旧姓の使用を認められず人格権を侵害された」という主張の下、学校を訴えていた問題について
東京地裁は女性の請求を棄却する判決を言い渡しました。

*詳細はコチラから
女性教員の旧姓使用認めず 東京地裁(朝日新聞デジタル)

 

女性の社会進出を目指す安倍政権下のもと
職場での夫婦別姓の問題に関しては認めた方が「女性の社会進出を進める」とのことで
政府も肯定的に認めてきた部分もある中で、少し物議をかもしているこの問題。

女性の社会進出が進み、働き方そのものが変わりつつあるこの今日。
この問題について触れながら「働き方」について考えてみたいと思います。

 

 

 

 

◆そもそも夫婦同姓・別姓って何?

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(出典:ぱくたそ)

夫婦同姓/別姓の問題を考える上で、最初に問題となるのは
一体いつから夫婦は同姓であることを求められてきたのか?という歴史的な背景です。

 

所説ありますが、いろんな文献を見る限り、どうやら
1898年(明治31年)公布・施行の明治民法が発端のようです。
*現在では明治民法は廃止され、現行の民法が運用されています。

民法第750条には

「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」

と記載されており、性を変えることを義務付けられています。

 

しかしながら、
日本国憲法の第24条には
【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】

「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」

とも記載されております。

 

特に「両性の本質的平等に立脚して制定されなければ…」
という記載に矛盾点があるという主張などが存在しているようです。

また、過去には最高裁大法廷で憲法判断が下されるという事態にも発展しています。
(ちなみに最高裁では夫婦同姓は合憲という判断が下されています。)

 

この部分に関しては様々な意見がありますので
どちらを肯定する/しないという話は控えたいと思いますが
こういった背景があることは理解しておく必要がありそうです。

 

 

 

 

◆そもそも夫婦別姓は2種類あるって知ってた?

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(出展:ぱくたそ)

そもそも夫婦別姓には2種類あるのをご存じでしょうか?

①事実婚(現在の夫婦別姓)
②選択的夫婦別姓

の2つです。
実は現状としては夫婦別姓を容認する法律はありません。

 

なので籍を入れずに形だけ結婚している「事実婚」の状態の方が多く存在します。
②「選択的夫婦別姓」に関しては現行の法律では認めるものがないため、実際のところは完全な別姓にしようと思うと日本では➀「事実婚」しか選択肢はないということになります。

実際のところは、結婚して戸籍上は同姓になってはいるが
職場では便宜上「別姓(旧姓)を名乗っている」というのが現状多いケースのようです。

 

 

 

 

◆夫婦同姓・別姓のメリット/デメリット

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(出展:ぱくたそ)

では夫婦同姓・別姓のメリット/デメリットを見てみたいと思います。
ざっくりと分けていくと下記のような形になります。

 

【夫婦別姓のメリット(同姓のデメリット)】

➀生活・仕事に関わる手続きが楽になる

結婚して、戸籍を入れた後に待っているのは
自動運転免許証やパスポート、住民票、保険証、銀行口座、クレジット・キャッシュカードなどの身分証明書類のものを変更する手間が発生します。また職場では名字の変更に伴いメールアドレスの変更、名刺の刷新、取引先への通達など、これまた面倒な問題が発生することもあります。

こういった問題から解放されるのは夫婦別姓のメリットといえるでしょう。

 

②プライベートを公にせずにすむ

結婚もそうですが、離婚時も戸籍を入れたり/抜いたり…こういったことによって
周囲の人には名字が変わることで「結婚/離婚したんだ」というのが一目瞭然になります。

個人的な話になりますが、小学校時代からの同級生の女の子が中学校2年生の時に突如名字が変わりました。親同士が離婚したというのはその当時でも容易に想像できたことです。思春期の女の子にとって、親の離婚ということ自体もショッキングな出来事だったと思いますが、中学校の中で名字が公然と変わるという出来事に私自身、当時は驚きました。

確かに別姓であれば、結婚や離婚をしたからといって名字が変わることもなくなりますので
こういった煩わしさとも無縁になることができたかもしれませんね。

 

③「家に入る」という心理的な負担から解放される

ここに関しては個々人の家族に対する価値観(考え方)が大きく影響すると思いますが
現在言われているように「嫁ぐ/養子に行く」という発想自体が旧来の「家」制度に縛られている感覚を持つ方も多いようで

・相手の家に入るということに対して抵抗感を持つ
・養子にもらわれることが情けないことと感じる
・なにかあったときに相手の家の両親と同居しなくてはいけないと思ってしまう

といった心理的なネガティブな要素があることも現在の同姓下ではあるようです。

 

④事実婚が減る

現在は選択的夫婦別姓が認めていないため、事実婚という形を取っている方も多いようですが
事実婚だと同じ結婚状態にはあるものの、戸籍上入っていないため、結婚している夫婦にある権利などを得ることはできません

具体的には

・税金の配偶者控除や給料の扶養家族手当がもらえない
・遺産の手続きをする際の法定相続人になれない
・子供が「非摘出子(婚姻関係がない男女の間に生まれた子ども)」として扱われる

などです。

選択的夫婦別姓が認められれば、同じ結婚状態にある過程と同様の権利を得ながら
別姓を選択することが可能なので、事実婚は減っていくと予想されています。

 

 

【夫婦別姓のデメリット(同姓のメリット)】

一方で夫婦別姓のデメリットは何なのでしょうか?

➀子供の名字の問題

子供は母親か父親どちらかの性を受け継ぐので、どちらを選択するのか?
という問題が発生します。
家族の中で名字がバラバラであるということ自体に寂しさを覚える方も多いようで、そもそも夫婦同姓が良いという意見もあるようです。

 

②離婚の心理的ハードルが下がる

ここも個々人の価値観によって分かれることではありますが
これまで「離婚して名字が変わると世間体が悪い」「手続きが面倒だ」といった要因で離婚が一定数は食い止められていたのも事実です。そういった歯止めがなくなり、離婚しやすくなることで離婚率が上がる可能性は十分にあります。

しかし、お互い望まないのであれば離婚して別々の道を歩んだ方が健全と
つまり「離婚=悪」という概念そのものが時代遅れであるとすれば
離婚しやすいこと自体はメリットともとらえることができます。

ここは判断は各々分かれる部分かと思います。

 

③パッと見て家族かどうか外部から判断しにくい

これまでは同じ名字であることから
他人から見ても家族であるという認識を持ってもらうことができましたが、別姓を名乗ったときには特に公の場所での家族としての認定が難しくなることは確実にあると思います。

 

 

 

◆夫婦同姓は女性の社会進出を阻害するのか?

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(出展:ぱくたそ)

さて、夫婦別姓/同姓に関する基本的なことは理解頂けたと思いますが
問題は『夫婦同姓は女性の社会進出(働きやすさ)を阻害しているのか?』
というところかと思います。

別姓が良い、同姓が良いというのは個人の指向性にもよります。
ただ、選択的に別姓を選べないことで働きにくさが増してあるようであれば問題かと思います。

結論から言えば、現状で特に働きやすさを明確に夫婦同姓が阻害しているということはないようです。

 

一般財団法人「労務行政研究所」の調べでは
非上場企業なども含め3700社のうちすでに65%では旧姓が容認されており、
調査を開始した93年の13%に比べて大幅に上昇していることがわかります。

同姓であっても旧姓の使用が認められる職場も確実に増えているようです。

ただ、今回のケースのように職場における旧姓使用がどこまで認められるのか?
というのは職場ごとに異なるようです。

海外では日本と違い、選択的夫婦別姓が認められている国や地域を多いため
日本とはまた違った事情があるようですが、特段夫婦同姓そのものが「働きやすさ」を縛っているという論文や記事は発見することができませんでした。
(同姓にすることで「働きにくい」と訴える声も存在します)

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

働き方同様に、夫婦の在り方や家族の在り方も時代とともに変遷をしているのかもしれません。

そういった意味ではこういった問題に対して企業ではどのように考えて取り組んでいくのか?
旧姓の使用だけでなく、家族を持つ男性・女性、それぞれにとってどのような職場環境が望ましいのか?
法律の改正がまだない中で、企業はどのように取り組んでいくのかが注目されるところだと思います。

日本国内だけを切り取って見れば
今後は労働人口が減少していく中で、採用はますまず厳しくなっていきます。
そういった中でいかに「働きやすい環境」を提供できるかで、企業の採用力・ブランディングは変わってくると思います。

こういった日々起きている出来事の中にも考えるべきことはありますね。
今後もこういった時事ネタから働き方などを考えてみる記事を書いてみようと思います。

 

 

 


【参考/引用】
◆夫婦別姓って何だろう?
夫婦の姓と法律

◆朝日新聞デジタル
女性教員の旧姓使用認めず 東京地裁

◆nanapi
暮らしはどう変わる?選択的「夫婦別姓」のメリット・デメリット

◆日本経済新聞
仕事で旧姓容認の企業65% 93年の13%から拡大

女性活躍へ重点方針決定 待遇改善や旧姓使用拡大など

◆弁護士ドットコム
<夫婦別姓問題>「名前を変えずに結婚したい!」2万人のネット署名、最高裁に提出

 

投稿者プロフィール

日比 大輔
「やりたい」をもっと素直に実現したい!5年勤めたヘッドハンティング会社を16年7月に辞めて、現在は就活サポート・若手社会人のお悩み相談を受けています。新しい働き方のトレンドやまとめ記事など多種多様にブログで発信していきます。
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