パラレルキャリア通信・南アフリカ在住ライターの村上萌です!
パラレルキャリアに活かせる本をご紹介するシリーズ、第4弾!今回ご紹介するのはこちらの本です。
『生きる場所を、もう一度選ぶ 移住した23人の選択(しごとのわ)』(小林奈穂子 著, 2016年)
これからパラレルキャリアを選択したいという方の中には、働き方だけでなく暮らし方や生きる場所そのものを見直したいという方も多いでしょう。
とりわけ、地方創生や地方への移住に関する話題は近年注目度も高まっており、この本は「パラレルキャリア×移住」という観点で、さまざまな発見ができる内容となっています。
移住者の仕事・暮らしの「本音」が、考えるきっかけをくれる
『生きる場所を、もう一度選ぶ 移住した23人の選択(しごとのわ)』は、著者である小林奈穂子さんが手がけた、全労済のウェブコンテンツ「今月の生きるヒント〜移住を選んだ人たち」を再構成した1冊。
インタビューに登場するのは、地方創生や移住などのキーワードで普段から情報を得ている方にはお馴染みの地域や、よく知られている方も少なくありません。
内容はタイトルの通りで、移住をした方々のストーリーを紹介してくださっています。移住前・移住後の仕事内容はもちろんのこと、それぞれに抱えていた思いや挑戦してみての現実など、内容は人それぞれ。
一般的には移住後のインタビューとしてメディアで紹介される内容は、成功している部分が多いです。
しかし今回の本では、本音に近いと感じられる移住のきっかけや、失敗や苦労なども含めて実体験を語られている方が多いことが印象的です。
語り口も、実際に話を聞いているような雰囲気を感じられ、気軽に読める1冊でもあると思います。
「パラレルキャリア×移住」のヒントとなる、3つのポイント
次に、この本のおすすめポイントをご紹介したいと思います。
「パラレルキャリア×移住」という観点で読む際のおすすめポイントは、大きく分けて3つあります。
(1)移住してどうやって食べて行っているの?というパラレルワーカーになりたい方必見の内容を知ることができる
専業なのか、複業という観点はもちろんのこと、どうやって現在の仕事に辿り着いたのかという変遷や、報酬の現実などについてさまざまな経験を垣間見ることができるのが本著の魅力の1つでは?と感じます。
生きていくための報酬は、お金だけでなく現物支給なんてケースも。都会で移住を迷っている段階ではなかなか想像できない、実際の状況が綴られています。
(2)「成功のケーススタディ」というよりも「人生の転換点で感じたこと」を知ることができる
著者によってまえがきでも語られている内容ですが、この本は決して成功のケーススタディのための本ではないと感じます。
移住後の仕事や暮らしで上手くいっている部分ももちろん紹介されてはいるのですが、移住前後の葛藤や失敗談、移住や新しい仕事への挑戦の背景にある幼少期の経験やこれまでのキャリアなど、幅広い観点で移住者の方々の人生を知ることができます。
その姿が、移住やパラレルワークを実際に行うために背中を押してくれることもあれば、一方で考え直すきっかけにもなりそうな内容です。
(3)移住のスタートは勢い?!皆さんの「きっかけ」に背中を押してもらえる
移住や新しい働き方をスタートするのには入念な準備が必要だと、尻込みしてしまう方もいるかもしれません。
しかし、実際の移住者の方の経験談を読むと、計画的に準備された方ももちろんいる一方で、直感的に判断して飛び込んでいる方も意外なことに多いようなのです。
田舎に訪れてみたら一目惚れして翌日辞表を出してしまった、一緒に仕事しようと言われて都会での仕事を辞めてしまった、都心から郊外に引っ越すのと変わらないノリで来た…などなど。
フィーリングを大切にしたり、重く考えすぎないことも重要なのかもしれません。迷っている方にとっては、気持ちを高めてくれるポイントになりそうです。
経験者の語る「生きるヒント」が、一歩踏み出す勇気をくれる
また、この本の面白いところとして、それぞれのストーリーの末尾に「生きるヒント」として、ご自身の経験から読者にとって、生活をより充実させたり、岐路の選択にも役立てたりできる考え方を紹介している点が挙げられます。
23人の生きるヒントのなかで、私が特に印象に残ったのは島根県・海士町に住む阿部裕志さんのものです。
阿部さんは新卒で入社したトヨタを辞め、海士町へIターン。株式会社巡の環を立ち上げ、島外の方達向けに地域との交流体験や、地域の魅力や価値を共有するための企画などを手がけています。
そんな阿部さんが海士町に移ってから、辛さを感じていた時期に町役場の方に言われた言葉というのが、「生きるヒント」として紹介されており、私はとても印象に残りました。
「人生は思い出づくりだわい!」
そう言われて、この辛い時期も思い出の1つになると、肩の荷が下りたのだと語っています。
こうしたリアルな土地と人との出会いの中で生まれた経験が、人生を前進させている様子が伝わりました。
そして私自身も、たった一度の人生、思いっきり自分のやりたいと思うことに挑戦したらいいじゃないか!と、鼓舞されました。
パラレルワーカーを目指す方、実践する方の場合、ロールモデルがいなかったり、前例がないことに挑戦したりする方も多いはず。そんな方にも、この「生きるヒント」は力をくれるような気がします。
さいごに
今回ご紹介した『生きる場所を、もう一度選ぶ 移住した23人の選択(しごとのわ)』は、成功事例を踏襲するという内容ではありませんが、それぞれのエピソードから得たエッセンスを仕事に役立てたられることはもちろん、一歩踏み出す勇気に変えられる、そんな1冊だと思います。
特に、移住を含むパラレルキャリアの実践を目指す方は、ぜひ読んでみてください!