目次
パラレルキャリア通信・南アフリカ在住ライターの村上萌です!
学生時代にキャリア理論やカウンセリングを学び、人材会社に勤務していた経験から「キャリア理論×パラレルキャリア」という観点で、これからのキャリア構築のヒントを紹介したい!と思いこの記事を書きました。
今回は、『キャリアドリフトの考え方がパラレルキャリアを面白くする!』をテーマに、より充実したパラレルキャリアライフを送れるような、キャリア理論畑からのヒントをお伝えできたらと思います。
「パラレルキャリア」にはロールモデルがない
今回の記事の背景として、「パラレルキャリア」で最も困難なことはロールモデルが存在しないため、どう進んでいくかが難しいという課題があると常々感じています。
自分の意思・選択で柔軟で複合的なキャリアを選択できる代わりに、「パラレルキャリアで得た経験をどう活かすかは、やってみなければわかない」ということも正直多いのではないでしょうか。
もちろん、そのような未知の可能性が醍醐味でもある一方で、時にリスクとなることも少なくありません。
安泰と思っていた大企業が経営危機に陥る昨今、実際にはパラレルキャリアに限らずこれまでのロールモデルが役に立たなくなる世の中になりつつありますが…
いずれにせよ、ロールモデルに代わってパラレルキャリアを実践する上で道標となる何かがあると良いのでは?と思ったわけなのです。
(出典:ぱくたそ)
ロールモデルの代わりに、人生のレールがない時に活かせる考え方「キャリアドリフト」とは?
そんな課題意識に対して、パラレルキャリアを歩む上で道標になりそうだなと思い出したのが、「キャリアドリフト」というキャリア理論です。
「キャリアドリフト」とは、自分のキャリアについて大きな方向づけさえできていれば、人生の節目ごとに次のステップをしっかりとデザインするだけでいい、節目と節目の間は偶然の出会いや予期せぬ出来事をチャンスとして柔軟に受け止めるために、あえて状況に“流されるまま”でいることも必要だという考え方を言います。
(出典:キャリアドリフト(キャリア ドリフト)とは – コトバンク / https://kotobank.jp/word/キャリアドリフト-802415)
この理論は神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏氏が2002年に著書『働くひとのためのキャリア・デザイン』の中で詳しく紹介されている理論で、「ドリフト」を「デザイン」の反対語として位置付けています。
出版年から考えればやや古い理論ではあるものの、節目はデザインしてその間はあえて“流される”というスタンスは、まさに相乗効果が予測不能なパラレルキャリアの歩み方そのもの在り方なのでは?と個人的には考えています。
(出典:ぱくたそ)
ドリフトするパラレルキャリアで大切なのは「節目の設計」
また、著作のなかで強調されている点として、ただ流されるだけでは危険という点も注目です。
キャリアは、もしデザインしなければ、ドリフトする。つまり流されていってしまうのだ。常にデザインするのは無理だが、節目にもそれを怠っていると、人生のドリフターズ(漂流者)になってしまう。
(出典:『働くひとのためのキャリア・デザイン』, 金井壽宏, 2002年)
ドリフト状態でパラレルキャリアを通じて得られる経験を積み重ねつつも、自分で区切りを作って自分のキャリアを再考、そして再構築することを繰り返すことでよりこうした生きたかのメリットが活きてきそうだと改めてこの言葉から感じさせられました。
キャリアドリフトは偶然のチャンスを生み出す
この理論をキャリアの歩み方のルールの一部とすることで、不安をちょっとでも取り除いて、今この瞬間にやるべきことに集中して取り組める後押しになるのではと私は考えています。
まず、節目をデザインすることで、ドリフト期間=パラレルキャリア期間をとことんやり抜く覚悟が決まります。
二足以上のわらじを履くパラレルキャリアは目的を見失ってしまうと、その経験が何にどう役立つのかわからなくなってきたり、ただただ忙しくなってきたりと、迷走しやすいリスクもあります。
しかし暫定的な期間を決めてその間はドリフトしてみるという考え方であれば、迷いも和らぐもの。まずはやってみようとポジティブなマインドセットもしやすくなります。
次に、ドリフト期間をとことんやり尽くすことで、偶然の産物に巡り会える可能性が高まります。
迷いなくドリフト期間を過ごせば、その成果もより大きなものになるかもしれません。複数の仕事での相乗効果が生まれたり、シングルキャリアでは得られない面白い発見があったりと、パラレルキャリアだからこそのチャンスや収穫を得られることでしょう。
節目をデザインし、キャリアの棚卸しをし、さらに新しい挑戦をしていく。そんな前向きなパラレルキャリアでのキャリア構築に、キャリアドリフトは求められるエッセンスと言っても過言ではないです!
(出典:ぱくたそ)
話題の『LIFE SHIFT』でも、ドリフトを活かしたキャリアのつくり方に注目
また、この2016年後半からしばしば話題になっている『LIFE SHIFT』でも非常に近い視点で、これからの100年人生のキャリア形成について紹介されている内容があります。
それが「エクスプローラー(探検者)」というキャリアの在り方です。この在り方は、旧来の「教育→仕事→引退」という流れが固定化された3ステージ型のキャリアとは違う、雇用形態などにこだわらず柔軟な働き方にチャレンジし、先々のキャリアの可能性を見出す期間として言及されています。
自分についての理解を深め、自分がどういう人間で、なにを好み、なにが得意なのかを見出していく。このステージは、自分の内面を探すというより、外的な刺激を通じて発見をおこなう期間になる。試練を与えられたり、思考を揺さぶられたり、怒りをかき立てられたり、ときには喜びを感じさせられたりする環境で自分について学ぶのだ。
(出典:『LIFE SHIFT (ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』, リンダ・グラットン, 2016年)
敷かれたレールの上を走る旧来的なキャリアではなく、縛られることなくさまざまなことにチャレンジするエクスプローラーとしての期間が、本当に自分のチャレンジしたいことを見出すきっかけになったり、かけがいのない人的ネットワークを築く時間になったりする可能性を秘めているといいます。
この先良くも悪くも何が起こるかわからない時代ですから、型にはまって受動的にキャリアを形成するのではなく、エクスプローラーの期間に思いっきりドリフトして、自分のキャリアを自分の手でつくる材料を集めることが必要なのかもしれませんね。
(出典:ぱくたそ)
さいごに
今回は思いのままに「キャリア理論×パラレルキャリア」をテーマに、最近感じていたことを言葉にさせていただきました。
パラレルキャリアを選んでいる方々はこうした理屈的な部分を超越している方も多いかなとは思いつつ、このままパラレルキャリアで過ごして大丈夫?と悩んでいる方や、これからパラレルキャリアを歩みたいなと考えている方々にとっても何かのヒントになればと思っています。