料理一本に絞らない板前としての働き方

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はじめまして、「店を持たない板前」の「ぼり」です。

縁あって、当「パラレルキャリア通信」でライターをさせて頂くことになりました。

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ぼくは現在、東京都内を中心に出張調理やイベント出店、オンライン料理サロンの運営、飲食店の紹介を行う飲食ライター、週2〜3日の小料理屋店主などの活動で生計を立てています。

 

初回の今回は、自己紹介を兼ねてぼくが現在の働き方に至るまでの経緯、そしてぼくなりの「働くこととの向き合い方」について書くことにしました。

 

 

 

◆料理が全てとは思えなかった板前が答えを見つけるまで


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参考)「出張調理風景」本人より画像提供

ぼくは昨年の夏、勤めていた都内の料亭を退職した。板前の世界に飛び込んで6年目のことだ。

その時はまだ今の働き方になるとは全く考えておらず、「自分の実現させたい生活」を追い求めて来た結果、現在に至ったというのが正直なところだ。

 

 

 

◆板前の「決まった将来」に違和感を覚えた


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参考)「料理画像」本人より画像提供

料理人のゴールといえば、「自分の店を持つ」か「雇われ料理長になる」というのが王道のルート。

ぼくも板前修業をはじめた当初は「自分の店を持つ」という目標のもと、日々修業に取り組んできた。

しかし、板前修業を続けていく中で、同い年の同期が休憩時間さえも惜しんで料理に没頭している姿を見て、あるひとつの違和感を覚えることになった。

 

「ぼくは『料理が好きで好きでたまらない』訳ではない」

 

「自分の店を持つ」という目標を立てて入った料理の世界、もちろん料理は好きだ。しかし、生活のすべてを料理に注ぎ込んで無我夢中になれるほどは好きではなかった。一方、その同期は本当に料理が好きで好きでたまらない人間だった。

 

修業を「好き」でやっている人間なら、わからないことがあれば好奇心でそれ以上に調べて学んでいく。他方、「努力」でやっているにすぎないぼくは、わからないことが解決できたらもうそれで満足、それ以上は調べることなく終わる。

修業を続けていくにつれて、「好きの修業」と「努力の修業」の間には埋めがたい実力差が生まれていく。

心底「好き」でやっている相手には、「努力」では敵いようもないのだ。

自分はおそらく、このまま料理が好きでたまらない人間だらけのこの世界で戦っていっても生き残れない。

そのことに気づいたのが現在の生活を始めるに至った「きっかけ」だった。

 

 

 

◆板前として「料理」を仕事にした理由と、実現したい生活のズレ


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参考)「料理を始めたきっかけ」本人より画像提供

このきっかけを経て考えたのは、料理の世界に踏み込もうと思った理由。ぼくが料理をはじめたそもそもの理由は、料理を通して「場づくり」がしたかったからだった。

 

料理とは全く関わりのなかったぼくが料理の世界に興味を抱くきっかけとなったのは、自分の友人を集めて主催していたBBQ。料理とも呼べないようなものかもしれないけど、自分が提供した「場」で友人たちが喜んでくれているのが本当に嬉しかった。

「これを仕事にして生きていけたらどんなに素晴らしいだろう」

そう思った。

 

ただ、BBQ を仕事にするというのはあまりに現実的ではないように思えたため、「自分の料理屋さんを開くこと」が一番目標に近いのではないかと考えた。

 

そして、「どうせ学ぶのであればしっかりとしたものを学ぶ。その上で崩したければ崩せばいい」という考えのもと、業界の中では遅めのスタートではあるが、24歳の時に割烹料理店にて「板前修業」をはじめた。

ただ、始めた当初から、「お店の営業の為に子供の運動会に行けないようなことになるのは嫌だなぁ」という考えはあった。

でも、何かを選ぶことは別の何かを捨てること。そう自分に言い聞かせて、気持ちに蓋をして修業を続けた。

伏せていた気持ちに限界がきたのは、修業を初めて4年ほど経った頃だった。その頃から退職を決意するまでの2年間、疑問を抱きつつも「一度掲げた目標なんだから諦めちゃいけない」「自分の発言に責任を持たなければいけない」と自分を奮い立たせて修業を続けた。

 

はじめた当初は「夢」だったはずの「店を持つ」という目標が、いつのまにか自分に課せられた「ノルマ」のように感じるようになってしまっていたのだ。

「自分は何の為に料理を仕事にしているのか」

その答えを見失いかけていた昨年の夏、ぼくは職場を後にした。

 

 

 

◆仕事は望んだ人生を実現するための「手段」だと認識する


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参考)「出張調理風景」本人より画像提供

まず、ぼくの「店を持つ」という目標自体が実現したい人生には合っていなかったということ。「場づくりの手段」で望んだ人生を実現するはずが、それでは望みが叶わないことに気づいた。

 

じゃあどうすればいいのか。答えはひとつ、その「手段=働き方」を変えるだけだ。

 

ところが、現状でぼくが知っている「手段」の中には、実現したい生活を手に入れられるものはなく、手探りの生活が始まる。自分ができることは何だろうとひたすら挑戦してきた結果、今がある。

こうして、料亭を退職して時間だけが有り余る中、ようやく自己理解を深めることができた。

 

どうやってコネも起業の知識もない自分がこれだけの仕事を頂けるようになったのかは、また別の記事で書き起こそうと思う。

 

 

 

◆料理だけに絞らずに手広く働くことで、もう一度料理が好きになれた


参考)「現在の写真」本人より画像提供
参考)「イベントでの登壇」本人より画像提供

最近になって、ぼくはようやく料理と自分との丁度いい「距離感」を掴めるようになった。そのおかげで、嫌いになりかけていた料理という仕事を再び好きになることができている。

毎日料理に没頭する訳ではなく、料理を「数ある仕事」のうちの一つにする

そうしたことで、改めて「料理」を生業としながら楽しく働く道を見つけることができた。

 

ここに至って、「専門職」「職人の世界」といわれる板前の世界の枠に囚われていたこと、ぼく自身が「こうでなければいけない」という固定観念に縛られていたことに気づく。

 

現在主流になっている板前の働き方では自分の理想とする生き方が実現できないのであれば、それ自体を変えていけばいい。この先もしかすると、今名乗っている「板前」という肩書きすらも変えてしまうかもしれない。

しかし、肩書きはあくまで肩書きであって、それが自分の目標とする働き方と違ったのであれば、無理をして肩書きに自分を寄せる必要もない。自分がどう生きていきたいかの方がよっぽど重要だ。

 

肩書きによって自分の活動が狭められてしまうのであれば、そんなものはただの足かせにしかならないのだから。

 

 

 

◆まとめ


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参考)「著者近影」本人より画像提供

今回の記事でお伝えしたかったことは、起業でも副業でも複業でもなんでも構いませんが、自分の実現したい生き方に合った働き方を見つけられる人が増えてほしいという願いです。

 

パラレルキャリアという言葉が生まれ、副業を認める企業も増えてきた中で、2足のわらじを履く人も珍しくなくなっていくでしょう。

ただし、それは「複業」という選択肢が増えたというだけで、みんながみんなそうすればいいという話ではありません。

自分に合った働き方、もとい生き方が「以前よりは」実現しやすくなったということ。

今はまだ、その段階でしかないと思います。

 

正しい働き方なんてないはずの世の中で、自分の実現したい生き方を選べる人が1人でも増えることを願って、この「パラレルキャリア通信」で記事を書いていきます。

投稿者プロフィール

大堀 悟
大堀 悟
勤めていた都内の料亭を退職し、「店を持たない板前」として、オンライン料理サロンの和食担当講師、出張調理、イベント出店、飲食店代理店長として活動。飲食に携わる人間が「店を持つ」以外の目標を持っても活動できるということを体現する為に日々奮闘中!
ブログでは飲食に関わる人間の働き方に関することを、実体験ベースに綴っていきます。
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